2020.03.06 関口団長のお便り

 

祐介先生、牟田さんこんばんは

 

 

 

 私はたまの休みの時に家内や子供たちと一緒に夕飯の材料や生活用品の買い出しに付き合うことがあります。

 

 ある時家内が牛乳を選んで買おうとするとき賞味期限の日付を見て棚の後ろから取ろうとしました。娘もそれを見ていました。私は言いました。「もしそれを全員がやったらどうなる。手前の牛乳は全く問題ない。その気持ちはわかるが、みんながそうやったとしても内だけは止めよう。」私は小学校6年生の娘に言いました。「お母さんは家族のことを思ってやってくれている。しかし、うちはこういうのはやめよう。」みんながみんなのことを考えなければね。」「これはみっともないということなんだよ。」と。

 

 今、世界中で蔓延する新型コロナウィルスはある意味、人間の本質を浮き彫りにさせているのではないでしょうか。SNSでは到底理解できない愉快犯によって流されたデマに翻弄され、我先に店頭に並び、奪い合いまでしながら余分なほどの品物を買いあさる。少し考えれば、世の中にはもっと必要としているお年寄りや子供たち、社会的弱者といわれるような人たちを優先すべきなのに、「物がなくなる恐怖」に人間の理性や日本人の美徳があっけなく失われてしまいました。

 

明治時代にフランスの外交官ポール・クローデルという人物がいました。彼は1923年、関東大震災の時、生存者たちの巨大な野営地で数日間過ごしました。その時彼が目にしたのは悲しみに打ちひしがれても「どうぞ、どうぞ」とお互いを譲り合い(つつ)ましく相手を気遣(きづか)う人たちの声でした。そして自分の身に降りかかった不幸を受け止め、どんな困難な時にも礼節を忘れない姿勢に彼は言いました。

 

「この世界にたった一つだけ残す民族がいるとするならば、それは日本人だ。」

 

 このラジオをお聞きのみなさん。今私たちは「未知なる恐怖」と戦わなければなりません。その為、今までの生活や収入、学校生活や仕事、イベント、スポーツ、様々な不安を抱えながらもみんなで乗り切らなければならないのです。確かに、今の政府のやり方では到底安心を得られるものではありません。しかし、祐介先生がいつも言いますね。「奪い合えばいつかはなくなり分かち合えば余る。」私たち日本人はあの東日本大震災の時、「絆」という言葉のもとにあれほど心を一つにできたではないですか。もちろん、私も不安です。しかし、隣の人も不安なはずです。皆さん、くしゃみ一つ、咳一つをするのにバッチをつけ、過敏に反応し、言い争う世の中なんて「みっともない」とは思いませんか。医学的予防に取り組み、注意をするのは当然です。しかし、私たちの心までウィルスに感染してはこの未知なる恐怖の思うつぼではないでしょうか。

 

 マスクだって、トイレットペーパーだって、奪い合っているのは大人です。その姿を子供たちが見ているのです。今みんなで支えあわなければ・・・・。

 

202036日 ハローアルソン・フィリピン医療を支える会 団長 関口敬人